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谷戸池公園の自然と環境メモ 2009年11月3日
粟飯原一郎
 
Ⅰ. 谷戸池の生き物と景観
 
★ 水辺のある風景は、人の気持ちを穏やかにしてくれます。水域があるとないとでは、生き物の数が数倍も違ってきます。トンボも蝶も、野鳥も哺乳動物も生きてゆくには水が必要で、いま、彼等は水場に飢えています。団地の真ん中に大きな池があり、樹林が広がっているのは貴重な財産です。このようなつくりの団地を見るのは初めてです。
 

★ 10月30日にはその谷戸池を上から眺めただけで、池に入って水網で調べたわけではありませんが、残念なことに、谷戸池は、環境省が排除すべきものと指定している外来生物に完全に占拠されているようです。特定外来生物→オオクチバス、ブルーギル、もしかしたらアメリカザリガニ、カダヤシ(外来メダカ)、ウシガエル?も。要注意外来生物→ミシシッピーアカミミガメ。その他→淡水貝のハブタエモノアラガイ、サカマキガイ(必ずいます)。以上のうち地中海沿岸原産のサカマキガイ以外は、全て北アメリカ原産の外来種です。これらに加えての最大の問題がコイです。

 
★  これらの魚とカメは、お互いを食べ合い、同じ身内を共食いし、何よりもオタマジャクシやサワガニや蜻蛉(ヤゴ)やゲンゴロウなどの水生生物を根絶やしにしています。30日の観察では、沢山いていいはずのアメンボさえあまりいません。カルガモの赤ん坊が生まれても、丸呑みにされてしまうかもしれません。厳しい話ですが、谷戸池は異常な生態系に支配されていることを正視しなければなりません。
 

★ 谷戸池は湧水量が少なく、降った雨が集まる集水域が狭いので、新鮮な水の供給が少なく、水底の淀み水の排出構造がうまくいっていないようです。 周囲の樹林には下草や低木がないため、表土が削られて池に土砂が流れ込んでいるのも問題です。そのため、底にはヘドロが堆積し、深い所では無酸素状態になっているかも知れません。景観上からいっても、淀んだ水を少しでも新鮮な水にしたいものです。

  

★ 大規模な作業になりますが、淀んだ水やヘドロを排出する構造につくり変え、池の「かい干し」をして問題の外来生物やコイを排除することがない限り、状況は基本的には変わりません。先ずは、水の排出構造がどうなっているのかを、当初造成した都市再生機構に聞いてみることは可能でしょうか。その結果によっては、町田市に相談し、水を抜いて水の排出構造を点検したり、かい干し作業の試算をしてもらえたらと思います。

 
★ 当面できることとして、池周辺の樹林地に下草・低木を植えて表土を固め、土砂の池への流入を防いだり、今植えられてあるカキツバタなどの水草の植え込みをしっかりしたものにして水辺を晴れやかにし、ヤゴなどの小昆虫の安全地帯とする工夫もあります。水草は汚染物を吸収し、水質浄化をしてくれます。池の鯉に餌を与えている人がいるのでしょうか。餌はヘドロの一要因になります。
 
★  谷戸池は市の公園の池であり、調整池でもあります。私は境川に沿った団地の調整池を調べ歩いたことがありましたが、町田市小山に「ヤマアカガエルが繁殖し、ギンヤンマなどのヤゴがたくさん羽化し、ゲンゴロウやミズカマキリなどの水生昆虫が棲む調整池」に出会いました。意図してつくったのでなく、偶然出来上がった調整池です。私は調整池を「人の立ち入りの出来ない生き物の繁殖地=サンクチャリー」にしたらいいと思っていつもいます。今すぐ出来なくても、市がその気になって検討し、専門家の協力があれば可能なことです。谷戸池については、大きな夢と可能な当面の道筋を皆で固めて行きたいものです。
 
Ⅱ. 公園と樹林の在り方
 
 桜台団地は(旧)公団(現)都市再生機構により造成され、現在は池と周辺の樹林は町田市が管理する都市公園になっています。町田市がそうだということでなく一般論ですが、地方自治体がつくり・管理する都市公園は、 維持管理の手数を出来るだけ省き、住民からクレームがありそうなことの一切を排除することに集中していて、なかなか住民目線、子ども目線で運営されていないのが現状です。老齢者の散策・ウオーキングや犬を連れての散歩道になっていても、乳幼児を連れた若いお母さんが語り集い、子どもが胸弾ませて群れ遊ぶ姿を見かけない公園が多いものです。また、自然や生き物に対する知識と配慮に欠けていることが多く、住民が木1本伐採する/植えるにも面倒な交渉と手続きが必要なのが現状です。
 
★ 谷戸池公園にある木の80~90%はシラカシケヤキです。沢山のシラカシと若干あるスダジイ(カシの木)及びヤブツバキなどの広葉常緑樹が生い茂っていて、林床は全体に薄暗く、低木や下草が全くなく、林を包んで守る林縁のツル植物もありません。そのため全体が薄暗く単調な眺めとなり、生き物の息づかいがあまり感じられません。 春から夏の様子を見ていないのですが、大雑把にはそんなことが想像されます。
 

★ 公園内の高木の広葉落葉樹としては、ケヤキの他にコナラ、ヤマザクラ、キリ、オニグルミ、クマシデ、ネムノキ、エノキ、ホウノキ、ミズキなどがごく小数みられるだけで、樹液の出るクヌギは全くありません。普通の雑木林に見られる、赤や青の実が美しいムラサキシキブ、ガマズミ、マユミ、ゴンズイ、クサギ、ニシキギなどの低木が全くなく、藤、スイカズラ、ノブドウ、カラスウリなどのツル植物、 シラカシ混じりの少し暗い林床にも生えるヤブラン、リュウノヒゲ、ウバユリ、ホトトギスなどの下草も見られないのはどうしてでしょうか。 シラカシの繁茂もその原因のひとつでしょうが、当初に完璧に排除されてしまったのでしょうか、または、今でも市が低木伐採、草刈りを継続しているのでしょうか 
 なお、池の西側、北側にはメタセコイア、クスノキ、サルスベリ、アセビ、桜、オカメザサなどが植栽されていました。

 

★ 私が参加させてもらったことがある「雑木林の管理や運営の検討会」で必ず出るのが 「婦女子が連れ込まれたり、問題児が悪いことをしたり、子どもが怪我をしないために、見通しを悪くする藪や低木や倒木を全て排除する」という意見です。 しかし、一方で、 「子どもがトンボや蝶やバッタと遊べる環境が欲しい。カブトムシやクワガタやタマムシが育つようにしたい。 四季の花が咲き、紅葉と木の実がなる小道があるといい」という希望が語られます。
 昔は考えられなかった変な事件が起きる現在、子どもの安全を図るのは大事な課題です。昔のように遊びのなかで身を守る術(すべ)を身につける機会がない現代社会では、子どもに怪我をさせないための配慮もぜひ必要です。私もそう思います。しかし、子どもの好きな昆虫は藪や草むらで生まれ育ち、カブトムシやクワガタは朽ちた倒木で育ちます。

 
★ これは私の経験したことですが、上記の二者択一の問題として扱われ、メリット/デメリットの議論が十分されず、折衷案の余地もなく「林床が芝生状態の樹林」がつくられてしまう例がよくありました。しかし、そのような林は乾燥して、樹木そのものが衰退して殺風景になり、昆虫が一匹も育たず、結果として大人も子どもも集まらない場所になってしまいます。身近な自然との接触な減るなかで、「藪や草むらは蚊や毒虫の温床」といった思い込みや過剰な反応があることも現実です。
 

★ 公園の樹林について市に実施してもらいたいこと、また、市が任せてくれるのなら、私だったら当面してみたいいくつかを箇条書きしてみます、 
  シラカシの木を伐採して、前記のような高木に切り替えて、樹林を少し明るくする 
  樹液の出るクヌギの木をぜひ植えたい 
  林の中に陽の差し込む空き地があってもいい 
  全体に現在ある木は古木・老木なので、将来に向けて若木に変えてゆく必要がある 
  低木と下草を一定程度回復させることを検討したい 
  倒木・枯木を大きく積み上げると、事故や怪我につながることにもつながるが、小さく
   切って置いたり、半分地下に埋めるなどの方法で、落葉と共に林内や林縁に置く
などです。

 
★ 樹林を明るくする伐採は、協議会としてすすめておられますが、前記低木/下草問題については、ぜひ検討していただくとよいと思います。樹林全体を低木と下草で満たすように---というのではなく、桐の広場の斜面など具体的に場所を指定して試し実施してみたいものです。降雨の際の表土の池への流れ込みを防ぐためにも必要で、広場では木の根が露出してしまって老人や子どもにとって危険です。 見た目の美しさ、楽しさから云っても、低木、下草はあって欲しいものです。
 

★ 谷戸山公園を豊にする活動については、町田市との対応問題と共に、団地の住民の合意と参加をどうつくり上げるかが最大の課題です。そのための活動のひとつとして、親子相手の小さな自然イベントを開くことはいかがでしょうか。初めは3~4人集まったら成功で、総勢7~8人になったら大成功です。谷戸池公園を想定してみれば
 「ドングリ独楽をつくって独楽まわし」
 「秋の林へ行って、ドングリの真っ赤な芽生え観察」
 「谷戸池公園の昆虫標本(蝶)のミニ展示」
 「桐の花を拾ってきて花のお絵かき会や押し花づくり」
 「夏の夜/蝉の羽化を見に行こう」
 「谷戸池の生き物のミニ水族館(前もって池で採集/100円ショップの水槽)」
 「桜の花で桜茶を作ってみよう」
などというのはどうでしょうか。委員には豊富な動植物の知識を持っておられる方も見受けられますし、また思いがけない講師・芸人がいるかもしれません。あまり大掛かりでない方が楽しく、会場は野外と小山田桜台自治会が借用している倉庫で十分です。
 私もこのようなことを試してみたことがあります。子どもを塾や習い事に通わせている若いお父さん/お母さんも、ほんとうは子どもには野外で思い切り楽しく遊ばせたいと云っていました。自然遊びをきっかけに、若い世代の人に参加してもらうことの大切さを知りました。

 

★ 私は自然環境や生き物のことに固執しすぎて、まちづくり協議会の皆さんの想いからかけ離はなれてしまったかもしれません。皆さんが先刻承知し、検討し取り組んでおられることを、もっともらしく大袈裟にメモしてしまっているかもしれません。どうかご容赦ください。

 30日のお話や協議会のホームページで、皆さんが公園の清掃活動、池への投棄物の除去、落書き対策、ベンチ修理、公園トイレの受託などに取り組み、団地の皆さんへのPR活動を続けておられることも知りました。 かならず団地の人々のなかに確かな共感をつくりあげ、市役所の固い扉をこじ開けることになると思います。 来年の初夏には、ぜひ谷戸池公園を訪ねてみたいと思っています。皆さんの健康と活動の発展を祈っております。いろいろありがとうございました。